「Pacman 256」バンダイナムコスタジオバンクーバーのマーケティングマネージャー 服部大輔氏(左)と、シニア・バイス・プレジデント 中山淳雄氏(右)ゲーム界全体でも昨年1番のヒット作となった「Crossy Road」。「Pacman 256」ではその開発元と共同開発を行なった
バンダイナムコスタジオバンクーバーは、社員数にして20~30名程度のこじんまりとしたスタジオだ。場所的にはブリティッシュコロンビア大学付属の教育機関、デジタルメディアセンター(Centre for Digital Media)の別館に入居していて、バンクーバーのダウンタウンと郊外の中間的な地域に位置している。
小所帯ながら2014年の設立から現在までにじわじわと規模を拡大してきており、これまでに国際共同開発ゲームとして「Pacman 256」、「Pacman Bounce」、そしてインハウス開発タイトルとして「Tap My Katamari」をリリース。設立から1年あまりの経過としては非常に上々、むしろ驚くほどにスピーディだ。
中でも特に大きな成功(リリースから10日で500万DL以上を達成)を収めたタイトル「Pacman 256」について、マーケティングマネージャーとの肩書を持つ服部大輔氏はその企画・開発に深く携わっている。
バンダイナムコスタジオバンクーバー マーケティングマネージャー 服部大輔氏:「Pacman 2565」に関しては、2014年11月にリリースされて1億ダウンロードを達成した大ヒットタイトル「Crossy Road」を開発したHipster Whaleとの共同開発という形で進めてきました。私達は企画を出して、実際のコーディングはHipster Wahleが行なうという形です。
そうした理由というのは、ちょうどこの作品の企画が持ち上がった時点で、モバイル業界のトレンドとしてCPI(ユーザーを獲得するための一人あたり平均単価)がうなぎのぼり、これは相当お金をかけないとユーザーが取れないぞ、という雰囲気がでてきていました。ちょうどその頃「Crossy Road」が大ヒットしてまして、講演などを聞くとマーケティング費用はほぼゼロといいます。それで1億人のユーザーを獲得していると。我々としては資金がすごいたくさんあるわけではないですし、まだ20数名の小所帯の会社ですので、「Crossy Road」の成功はすごく参考にしていました。
その内容と、私達のIP、北米で1番強いのはパックマン、これを組み合わせて何かできないかなと。いろいろと案を考えてみた結果、だったら直接Hipster Whaleに声をかけてみよう、というところから開発がスタートしたんです。そういうわけで、ベースとしてはパックマンというIPと、Hipster Whaleの開発力をうまいこと組み合わせてできたのが「Pacman 256」ということになります。
Hipster Whaleとの共同開発に加えて、パブリッシングはバンダイナムコエンターテイメントのフランスのスタジオが担当。バンクーバー、オーストラリア、フランスという3カ国をまたがったプロジェクトがいとも自然に進行していることについて、服部氏は「結構不思議な感じですよね」と笑う。このあたり、英語ベースのコミュニケーションが当たり前に行なわれる環境だからこそという部分も大きいようだ。
服部氏:そうですね、とくに現場レベルのやりとりも英語でスムーズに行なえるのがよかったです。そこはもう凄くスムーズで。日本発だとなかなかやりにくい案件かなあというふうに思っています。私自身は北米に10年くらい住んでいましたので、一応ネイティブに近い感じでしゃべれますので、その点でも難しさは感じずに済んでいます。
それに加えて、開発のスピードも驚きだ。共同開発を行なったHipster Whaleにコンタクトを行なって、製品化までがわずか半年強ほどだったという。
服部氏:最初のコンタクトをとったのが今年の1月だったんですよね。3月にはGDCというイベントがあって、そこで初めて顔を合わせたんですよ。そこでもうプロトタイプができてまして(笑)。「ちょっと遊んでみてくれ」と言われて。私達としては企画の内容を詰めるくらいのつもりでいたのですが、プロトタイプを遊んだらもう面白くて。こちらとしては「パックマンの世界観を壊さずに、「Crossy Road」の機能をうまく組み合わせたい」という企画だったんですけど、それをまさに1月から3月の間に、バシッとハマるものを作ってもらえたという感じです。
しかも、彼らもパックマンのことが凄く好きだったようで、オリジナルのアーケード版で256面までいくとバグってしまう、それをゲームにしようというアイディアも彼らから出てきたんですよ。ゲームの中身を彼らのほうがよく知っていたという(笑)。なので、話はとにかく速かったですね。はじめから日本側の承認もすんなり降りるほどによくできていて、とにかくスムーズでした。
こういったバンダイナムコスタジオバンクーバーを戦略面で支えるのが、エグゼクティヴ・バイス・プレジデントの中山淳雄氏だ。中山氏は英語は留学で学んだとのことで、そこには大変な苦労があったというが、その苦労の甲斐もあり、今回「Pacman 256」で実現したスピーディな国際コラボレーションについて、バンクーバーという立地だからこそやりやすかった、としてこのように語っている。
バンダイナムコスタジオバンクーバー シニア・バイス・プレジデント 中山淳雄氏:私も日本で海外向け戦略プロジェクトというのをやっていたんですけども、日本で得られる情報ってやっぱり日本のタイトルばっかりで、1歩外に出るとほとんど通用しなかったりするんですよ。早い話が、「Crossy Road」というタイトルが非常に成功しているという話をみんなにわかってもらいにくいですよね。「Crossy Road」は去年(2014年)の11月に出てるんですが、その2カ月後にはコンタクトすることができて、さらに2カ月先にはプロトタイプもできていたりと。まさにこっちでやっているからこそできた、稀なタイトルだなあと思っています。グループの中でもこんな事例は他にないんじゃないですかね。
「Pacman 256」に続くタイトル、「Pacman Bounds」も、他の企業との協業だ。こちらは地元カナダのゲームデベロッパー、Victory Squareという会社とのコラボレーションで、「Pacman 256」とは随分毛色の違うゲームになっていることにもきちんと理由がある。
服部氏:Victory Squareは実はAndroidのゲーム開発は初めてなんですよ。もともとはマイクロソフトのプラットフォームでゲームを出していまして。そんな彼らのゲームを見た時に「パックマンの世界観に合いそうだね」という話をしたら、その1週間後に簡単なモックアップを作って持ってきていただいて。それが面白そうだということで、Android開発の経験どうこうというよりはゲームの面白さメインでプロジェクトをスタートさせました。
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