かつて人間が月に行くことができたように、現在では実現不可能だと思われていることが、いつか現実のものになるかもしれません。ムーンショット計画はこれまで、Googleの親会社であるAlphabet社を始めとするシリコンバレーなどのIT企業で盛んに行われてきました。AI技術を利用した完全自動運転車、求める情報がレンズに表示されるスマートグラス、植物を個別に検査して必要な調整を行う農業のデジタル化などです。
ダートマス大学の経営学博士、スコット・アンソニー氏は、優れたムーンショットには「Inspire(人々を魅了し、奮い立たせる)」「Credible(根拠があり、信憑性がある)」「Imaginative(斬新なアイデアである)」という三つの条件が必要だと述べています。
最近では、シリコンバレー以外の地域や業種でも、ムーンショットの概念が広く使われ始めています。例えば日本では、内閣府が「ムーンショット型研究開発制度」というイノベーション創出を目指した大胆な発想に基づく研究開発を推進しています。自然災害、超少子高齢化といった日本ならではの困難な課題を含め、次のような九つの目標を定めました。
目標1:2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現目標2:2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現目標3:2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現目標4:2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現目標5:2050年までに、未利用の生物機能などのフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出目標6:2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現目標7:2040年までに、主要な疾患を予防・克服し100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現目標8:2050年までに、激甚化しつつある台風や豪雨を制御し極端風水害の脅威から解放された安全安心な社会を実現目標9:2050年までに、こころの安らぎや活力を増大することで、精神的に豊かで躍動的な社会を実現
ムーンショット型研究開発制度の特長は、「失敗を許容する」と明言している点です。世の中を変えるようなインパクトのあるプロダクト・サービスの陰には、何百、何千もの失敗があります。先に挙げた三つの条件を満たす挑戦を数多く行うからこそこそ、人々を驚かせるムーンショットが実現するのでしょう。
・参考ムーンショット型研究開発制度(内閣府)
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